HR Report

SNS採用はどこまで有効か?
歴史・成功事例・限界を採用支援会社の目線で徹底解説

近年、企業の採用活動においてSNSの活用が当たり前になりつつあります。
X(旧Twitter)、Instagram、TikTok、LinkedInなどのプラットフォームを通じて、企業文化を発信し、求職者とダイレクトにつながる手法が注目されています。

しかし、「SNS採用は本当に効果があるのか?」 という疑問を持つ企業担当者も多いのではないでしょうか?

実際私の見解としても、「やらないよりやった方がもちろん良いんだけど、まず最初にやるべきことってほかにあるよね!」という感じです。

本記事では、そもそもSNS採用がどのように広まったのか、その歴史や成功事例を紐解きながら、どこまで効果が期待できるのかをHRの視点で解説します。

さらに、SNS採用の限界や注意点、総合的な採用戦略の中でどのように位置づけるべきかを考察して行きます!

監修者

株式会社Revive代表
熊野拓人

法人向けにインフラ系商材の電話営業を行い、キャリア内で全国売上No.1の販売代理店において新人賞を3ヶ月で獲得。営業人材の育成、営業業務の代行を主軸に2021年株式会社Reviveを設立。2年で計100名以上の営業組織を構築し、50社以上の営業プロジェクトに携わる。後に動画やWebにおけるクリエイティブの制作から採用支援サービスを開始。現在では採用計画の立案から、一次面接の代行までを請け負う総合的な採用支援活動を行い、中小企業を中心に約50社以上を採用成功に導く。

株式会社Revive代表
熊野拓人

法人向けにインフラ系商材の電話営業を行い、キャリア内で全国売上No.1の販売代理店において新人賞を3ヶ月で獲得。営業人材の育成、営業業務の代行を主軸に2021年株式会社Reviveを設立。2年で計100名以上の営業組織を構築し、50社以上の営業プロジェクトに携わる。後に動画やWebにおけるクリエイティブの制作から採用支援サービスを開始。現在では採用計画の立案から、一次面接の代行までを請け負う総合的な採用支援活動を行い、中小企業を中心に約50社以上を採用成功に導く。

SNS採用の歴史:最初に活用した事例は?

SNS採用の概念が登場したのは2010年代前半。
当時、米国を中心に「ソーシャルリクルーティング」という言葉が使われるようになりました。最初にSNSを採用活動に活用したのは、LinkedInとTwitterを使った企業です。

LinkedInの登場とソーシャルリクルーティングの拡大

LinkedInは2003年に設立され、プロフェッショナル向けSNSとして成長しました。
2010年代に入ると、企業がLinkedIn上でダイレクトリクルーティングを行い、求職者と直接つながる手法が確立されました。
特に、エンジニアや専門職の採用で効果を発揮しました。

LinkedInを活用した企業の中でも、LINE株式会社はその成功事例の一つです。同社は、即戦力となるエンジニア採用とグローバル市場での認知向上を狙い、LinkedInを活用した採用戦略を展開します。

具体的には、LinkedIn上で自社の技術力や開発チームのカルチャーを発信し、候補者に向けた情報提供を積極的に行いました。
また、LinkedInの「タレントインサイト」を利用して、スキルや経験がマッチする人材に対して個別アプローチを実施。結果として、企業のミッションやプロダクトに共感するエンジニアの採用につながりました。
加えて、LinkedIn上での企業フォロワーも増加し、採用活動のブランド力向上にも寄与したという情報があります。

Twitterを使った採用活動の広がり

​Twitterを活用した採用活動は、2010年代初頭から急速に広がりを見せ、特に、2011年頃に米国の採用マーケティング専門家であるマリアン・アンデルセン氏が「Twitterを活用した採用の有効性」を提唱したことが、この動きを加速させました。​

Twitterの特徴と採用への活用

Twitterはリアルタイムで情報を発信・共有できるプラットフォームであり、その即時性と拡散力が採用活動においても注目されました。​
企業や採用担当者は、短いメッセージ(ツイート)を通じて求人情報や企業文化を発信し、求職者と直接コミュニケーションを取ることが可能となりました。​

ハッシュタグ「#HireMe」「#JobSearch」の活用

アンデルセン氏は、求職者が自身のスキルや経験をアピールする際に「#HireMe」や「#JobSearch」といったハッシュタグを使用することを推奨しました。
​これにより、企業やリクルーターはこれらのハッシュタグを検索することで、積極的に仕事を探している候補者を見つけやすくなりました。​
同時に、企業側も「#NowHiring」や「#JobOpening」などのハッシュタグを用いて求人情報を広く拡散する手法が一般的となりました。​

具体的な活用事例

例えば、米国の大手企業であるゼロックス(Xerox)は、Twitterを活用した採用活動で成功を収めています。​
同社は、Twitter上で「#XeroxJobs」という独自のハッシュタグを作成し、最新の求人情報や社内イベント、社員の声などを積極的に発信しました。
​これにより、求職者とのエンゲージメントを高め、採用ブランディングの強化にもつながりました。​

日本における展開

日本でも、Twitterを活用した採用活動が広がりを見せています。
​特に、IT企業やスタートアップ企業がTwitterを通じてエンジニアやデザイナーなどの専門職の採用を積極的に行っています。​
また、求職者側も「#転職活動」や「#求人募集」といったハッシュタグを用いて情報収集を行うなど、双方向のコミュニケーションが活発化しています。

ハッシュタグで求めている情報などを検索できる点が、単純につながるだけの媒体ではなく検索プラットフォームとして重要な役割を果たしていると言えます。

Facebook・Instagram・TikTokの台頭

​2015年以降、SNSプラットフォームの多様化に伴い、企業の採用活動もFacebook、Instagram、TikTokなどを活用する動きが活発化しています。
​これらのプラットフォームは、それぞれ独自の機能やユーザー層を持ち、採用ブランディングや人材獲得において重要な役割を果たしています。

Facebookの「Job Posts」機能の活用

Facebookは2017年に「Job Posts」機能を導入し、企業が直接求人情報を投稿できるようになりました。​
特に中小企業にとって、低コストで広範囲に求人情報を届ける手段として注目されています。
​例えば、米国のベーカリー「Bake’n Babes」は、Facebookの求人投稿を活用してスタッフを採用することに成功しました。​
この機能を利用することで、地域の求職者に効率的にアプローチでき、採用活動の効率化が図れます。

Instagramのビジュアルコンテンツによるブランディング

Instagramは視覚的なコンテンツが主体のプラットフォームであり、企業文化や職場の雰囲気を伝えるのに適しています。​
例えば、株式会社プレナスは、Instagram上で店舗スタッフや本部社員の紹介を通じて、飲食業界でのキャリア形成の魅力を発信しています。​
これにより、求職者に具体的な職場イメージを提供し、応募意欲を高める効果が期待できます。 

TikTokによる若年層へのアプローチ

TikTokは短い動画コンテンツが特徴で、特にZ世代と呼ばれる若年層に人気のプラットフォームです。​
企業はTikTokを活用して、社内の雰囲気や日常業務をユーモラスに紹介することで、若い求職者の関心を引くことができます。​
例えば、飲食業界やアパレル業界では、TikTokを通じて会社の日常や社員の本音を発信し、応募者数の増加につなげています。​

日本企業の先駆的事例:メルカリとサイバーエージェント

日本においても、メルカリやサイバーエージェントなどの企業がSNSを活用した採用活動を積極的に展開しています。
​メルカリはオウンドメディア『mercan(メルカン)』を運営し、社員のインタビューや社内イベントの様子を発信することで、企業文化や働く環境を求職者に伝えています。​
この取り組みにより、入社後のミスマッチを防ぐ効果があり、採用ブランディングの成功事例として知られています。 

サイバーエージェントは、YouTubeやTwitterなどのSNSを活用して、会社のリアルなコンテンツを発信しています。​
新卒採用やエンジニア採用向けに専用のアカウントを作成し、ターゲット層に合わせた情報発信を行うことで、企業ビジョンに共感する人材の獲得につなげています。 ​

これらの事例から、各SNSの特性を理解し、適切なプラットフォームを選択して情報発信を行うことが、効果的な採用活動につながることがわかります。
​企業は自社のターゲットとする人材層や採用目的に応じて、SNSを活用した戦略的な採用活動を検討することが重要です。

SNS採用の成功事例とその手法

​SNSを活用した採用活動は、企業文化や働く社員のリアルな姿を発信することで、求職者との距離を縮める効果的な手法です。​
サイバーエージェントやメルカリ以外にも、多くの企業がSNSを活用して成功を収めています。
以下に、具体的な企業の事例とその手法を紹介します。​

集英社のTwitter活用事例

大手出版社である集英社は、Twitterを活用して採用活動を展開しています。​
同社の採用担当アカウントでは、採用情報やイベント告知だけでなく、編集業務の紹介や社員の日常など、社内の雰囲気を伝える投稿を行っています。​
これにより、求職者は集英社の業務内容や職場環境を具体的にイメージしやすくなり、応募意欲の向上につながっています。 

JALスカイのInstagram活用事例

JALスカイは、Instagramを活用して採用ブランディングを強化しています。
​同社の公式アカウントでは、空港で働くスタッフの紹介や業務風景、社員インタビューなどをビジュアルコンテンツとして投稿しています。​
これにより、求職者は職場のリアルな様子を視覚的に理解でき、企業への親近感や興味を高める効果を生み出しています。 

サイボウズのYouTube活用事例

ソフトウェア開発企業であるサイボウズは、YouTubeを活用して採用活動を行っています。
​同社の公式チャンネルでは、社員インタビューやオフィスツアー、企業理念に関する動画など、多彩なコンテンツを配信しています。​
これらの動画を通じて、求職者はサイボウズの企業文化や働く環境を深く理解することができ、応募前の不安解消やミスマッチの防止に寄与しています。

 ANAのTikTok活用事例

全日本空輸(ANA)は、TikTokを活用して若年層へのアプローチを強化しています。​
同社の公式アカウントでは、客室乗務員や地上スタッフの日常業務をユーモラスに紹介する短編動画を投稿し、親しみやすい企業イメージを発信しています。
​これにより、Z世代の求職者からの関心を集め、応募者数の増加につながっています。

日本マクドナルドのLINE活用事例

日本マクドナルドは、LINEを活用してアルバイト採用を効率化しています。
​同社は公式LINEアカウントを通じて、求人情報の配信や応募受付を行い、求職者とのコミュニケーションを円滑にしています。
​LINEという日常的に使用されるプラットフォームを活用することで、応募のハードルを下げ、多くの応募者を集めることに成功しています。 ​

これらの事例から、各企業が自社のターゲット層や採用目的に合わせて適切なSNSプラットフォームを選択し、企業文化や社員のリアルな姿を発信することで、求職者とのエンゲージメントを高めていることがわかります。

​SNS採用を成功させるためには、単なる求人情報の発信にとどまらず、企業の魅力や働く環境を積極的に伝えることが重要です。

SNS採用の効果と限界

​SNS採用は、企業の認知度向上やブランディングに有効な手段ですが、即効性や運用コストに関しては注意が必要です。
以下に、SNS採用のメリットと限界、そして運用コストや効果が出るまでの期間について詳しく解説します。​

SNS採用のメリット

  • 認知度向上:​特に知名度の低い企業にとって、SNSはブランド発信の有力な手段となります。​定期的な情報発信により、多くのユーザーに企業の存在を知らせることができます。​
  • 求職者との距離を縮める:​SNSを通じてカジュアルなコミュニケーションが可能となり、求職者が気軽に企業と接点を持てます。​例えば、ダイレクトメッセージ(DM)やコメント機能を活用して、双方向のやり取りが促進されます。​
  • 応募者の質向上:​企業文化や働く環境をSNSで発信することで、これらに共感した求職者からの応募が期待できます。​結果として、企業とマッチした人材の採用につながりやすくなります。​

SNS採用の限界

  • 即戦力採用には向かない:​SNS採用は中長期的なブランディング戦略として有効ですが、即戦力となる人材、特にBtoB営業や管理職の採用には不向きとされています。​これらのポジションでは、専門の人材紹介会社やヘッドハンティングが効果的です。​
  • 炎上リスク:​SNS上での発信は、不特定多数に拡散される可能性があり、内容によっては誤解を招き、企業イメージの損失につながるリスクがあります。​そのため、投稿内容の精査や迅速な対応が求められます。​
  • 運用リソースが必要:​継続的な情報発信や求職者とのコミュニケーションには、専任の担当者やチームが必要となり、運用コストや時間的な負担が増加します。​

運用コストと効果が出るまでの期間

  • 運用コスト:​SNS採用には大きく分けて「アカウント運用」と「広告運用」の2種類があります。​アカウント運用は主に人件費が中心で、直接的な費用は少ないものの、担当者の工数が増加します。​一方、広告運用では、広告費用が発生します。​効果的なターゲティングと成果を上げるためには、月額20万円以上の予算が推奨されています。​これは、SNS広告のAIが学習し、最適化するために一定の配信量が必要となるためです。 ​
  • 効果が出るまでの期間:​SNS採用は即効性が低く、効果が現れるまでに時間がかかるとされています。​特にアカウント運用では、フォロワーの獲得やエンゲージメントの向上に時間を要します。​例えば、Instagramの運用代行業者を利用した場合でも、半年~1年で当初の目標を達成するケースが多く。​自社で運用する場合、さらに時間がかかる可能性があり、長期的な視点での取り組みが必要です。

以上を踏まえ、SNS採用を導入する際は、目的やターゲット層を明確にし、適切なプラットフォーム選定と運用体制の構築が重要です。​
また、短期的な成果を求める場合は、他の採用手法との併用や、SNS広告の活用を検討することが効果的です。

SNS採用を総合採用戦略にどう組み込むべきか?

​SNS採用を効果的に活用するためには、他の採用手法と組み合わせた総合的な戦略が重要です。以下に、具体的な組み込み方法を詳しく解説します。​

求人媒体・採用サイトとの連携

SNSは企業の認知度向上やブランディングに有効ですが、直接的な応募につなげるためには、求人媒体や自社の採用サイトとの連携が不可欠です。​
SNS上で興味を持った求職者が、スムーズに応募できるように導線を設計することが重要です。​
具体的には、SNSの投稿やプロフィールに求人情報へのリンクを設置し、詳細な募集要項や応募フォームへ誘導します。​
これにより、求職者は簡単に応募手続きを行うことができ、応募率の向上が期待できます。​

ダイレクトリクルーティングとの併用

SNSは、潜在的な候補者と直接コミュニケーションを取る手段としても有効です。​
特に、LinkedInやX(旧Twitter)などのプラットフォームでは、特定のスキルや経験を持つ人材を検索し、直接アプローチすることが可能です。​
この手法は、専門職やIT人材の採用において高い成果を上げています。
​例えば、企業のリクルーターがSNS上で候補者に直接メッセージを送り、カジュアルな面談を提案することで、求職者との関係構築を深めることができます。​

企業カルチャーの発信による「共感採用」の促進

SNSは、企業の文化や日常を伝える場としても活用できます。
​求職者は、企業の公式サイトだけでは得られないリアルな情報を求めています。
​例えば、社員の日常やオフィスの雰囲気、社内イベントの様子などをSNSで発信することで、求職者に企業の価値観や働く環境を伝えることができます。​
これにより、企業文化に共感した人材からの応募が期待でき、ミスマッチの少ない採用につながります。​

継続的な情報発信とエンゲージメントの強化

SNS採用は、短期間で成果を上げることが難しいため、継続的な情報発信が求められます。
​定期的な投稿やフォロワーとの双方向のコミュニケーションを通じて、企業への関心を維持し、エンゲージメントを高めることが重要です。​
また、投稿内容は求職者にとって有益で興味深いものであることが求められます。​
例えば、業界の最新情報や社員の成功事例、キャリアパスの紹介など、多様なコンテンツを提供することで、フォロワーの関心を引き続けることができます。​

SNS広告の活用によるターゲット層へのリーチ拡大

オーガニックの投稿だけでなく、SNS広告を活用することで、特定のターゲット層に効率的にアプローチすることが可能です。​
SNS広告は、年齢、性別、興味関心、勤務地などの条件でターゲティングができるため、求める人材像に合わせた広告配信が可能です。​
ただし、広告運用にはコストがかかるため、予算の範囲内で効果的な運用を行うことが求められます。​
一般的に、SNS広告の効果が現れるまでには時間がかかるため、長期的な視点での取り組みが重要です。​

個人的にはSNS広告に予算を投下するのであれば、先にDodaやマイナビといった、ニーズが顕在化した層が集める媒体に対して予算を投下していくことをおすすめしています。

社内リソースと外部パートナーの活用

SNS採用の運用には、継続的なコンテンツ作成やフォロワーとのコミュニケーションが必要であり、社内リソースだけでは対応が難しい場合もあります。​
その際は、SNS運用の専門知識を持つ外部パートナーとの連携を検討することも一つの方法です。​
外部の専門家と協力することで、最新のトレンドを取り入れた効果的な運用が期待できます。
ただし、外部委託にはコストが伴うため、予算や目的に応じて適切な選択を行うことが重要です。​

以上のポイントを踏まえ、SNS採用を総合採用戦略の一環として位置づけることで、企業の魅力を効果的に伝え、求職者との接点を増やすことが可能となります。
​他の採用手法と組み合わせ、バランスの取れた採用活動を展開することが、優秀な人材の獲得につながるでしょう。

まとめ:SNS採用は「単独ではなく戦略的に使う」ことが重要

SNS採用は確かに効果があるものの、即戦力採用や大量採用には向いていません。
あくまで「企業ブランディング」や「求職者との接点作り」として活用し、求人媒体や人材紹介と組み合わせることで、より効果的な採用が可能になります。

感覚としては、『HPとは別の場所で企業の中身を知らせるコンテンツを作っておく』くらいの感覚です。

顕在層に対して認知を広げていくのには、求人広告の掲載には勝てません。
ある程度広告予算があって、すでに顕在層に対して面は貼れている状態であるが、更に企業認知を深めて行きたいという場合に、選択肢として挙がってくる印象です。

企業がSNS採用を導入する際には、ターゲットとなる人材層や運用リソースを考慮し、適切な戦略を立てることが求められます。
SNSを活用しつつ、他の採用手法と組み合わせることで、より強固な採用戦略を構築できるでしょう。

どんな手段を活用するにしても、戦略が重要となってくるため、総合的な判断が必要と言えるでしょう!

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